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抗菌薬使用動向調査システム(JACS)

概要

JACS(Japan Antimicrobial Consumption Surveillance)は、日本における抗菌薬使用量や感染対策の状況を経年的に把握できるネットワーク構築を目指し、また、感染対策における地域連携を深める材料として得られた情報を還元することにより、感染対策の質をさらに向上させ、国民に還元することを目的としている。

調査方法

i.各医療機関における注射用抗菌薬使用状況と施設背景の把握
これまでに、Webシステムが構築され(役務先:株式会社ドーモ)、2015年4月に公開されている。2015 年 11 月に 2014 年の使用量に対してパイロット的に調査依頼が行われた。現在、2016 年度末に 2010 年から2015 年までの使用量についての調査依頼が行われており、2017 年度には集計結果がフィードバックされる予定となっている。

ⅱ.販売データ等に基づく経口薬・注射薬の抗菌薬使用状況の把握
IMS ジャパン株式会社より 2009、2011、2013 年の抗菌薬使用量を入手し、WHO が推奨する DID が算出された。各抗菌薬は ATC 分類によりレベル 3、レベル 4 で集計し、他国データと比較された。

体制

JACS の体制は、2つの要素(①耐性菌の分離頻度が増えない=感染対策、診療が適切に行われている、②耐性化が進まない=選択圧がうまく制御されている)を評価するため、①各医療機関における耐性菌患者に対する実際の投与状況を把握することを目的とした感染対策に関わる薬剤師によるオンラインデータ収集、②卸業者からの販売データ等に基づく診療所や外来診療を含めたデータ収集から成り立っている。
即ち、①については各医療機関における注射用抗菌薬を Web 上における統一フォーマットにて力価あるいは使用日数を入力し、WHO や CDC で推奨されている指標の AUD(Antimicrobial Used Density)や DOT(Day of Therapy)として自動計算し、収集及び還元する。また、②については販売量データを IMS ジャパン株式会社より購入し、経年的な抗菌薬使用量を集計後、WHO が定義する DDD(Defined Daily Dose)と日本の人口で補正した DID(DDD/1,000 inhabitants/day)で算出するといった体制としている。

抗菌薬使用量の指標

・Antimicrobial use density, AUD
AUD は一定期間における抗菌薬の力価総量を世界保健機関(WHO)で定義された DDD(defined daily dose)で除した値(DDDs)を患者延べ日数で補正した値であり、単位は DDDs/100 bed-days や DDDs/1000 patient-days 等で示される。外来処方は使用量(力価)を DDD で除し、分母を 1 日あたりの地域住民(inhabitants)で補正する DID(DDDs/1,000 inhabitants/ day)という算出方法もある。AUD という単語は日本では普及しているが、海外誌等では DDDs と示されることもある。欧州を中心に使用されている AUD は、計算が比較的容易であり、力価を求めるため、コスト計算にも利用できる利点があるが、小児には適用できず、定義された DDD が自国の投与量や推奨量と異なると施設間で比較する際に過少あるいは過大評価を招くことがある。

・Day of therapy, DOT
DOT は一定期間における抗菌薬の治療日数の合計(DOTs)を患者延べ日数で補正した値であり、単位は DOTs/100 bed-days や DOTs/1000 patient-days 等で示される。米国で標準的な指標として用いられており、小児にも使用できるが、投与量の概念が入らず、併用患者の投与も重複して数えることから治療期間を推定できない。また、分母に患者延べ日数ではなく、入院患者数を用いる場合もあり、耐性率との相関は患者延べ日数を分母とした場合よりも良好という報告がある。

今後の展望

現在、上述した医療機関における使用状況を各施設でレセプト請求ファイル(EF ファイル)より自動計算させるプログラムが開発されている。自動計算させたファイルは 2017 年 4 月より設立された国立国際医療研究センターにおいて AMR 臨床リファレンスセンター(AMRCRC)内に設置された感染対策連携共通プラットフォーム (J-SIPHE: Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology)のサーバ内に保管できるように準備が進められている。J-SIPHE では、任意のグループ間での使用状況と自施設との比較が可能となる。また、NDB を用いた年齢別、都道府県別、医療圏別の使用状況の把握、小児における使用状況の把握など様々な診療情報データベースに基づいた使用状況の把握なども進められている。